レンジ・モルフォロジー
現代ポーカーにおいて、ポーカーを上達するためにはGTO戦略の勉強が欠かせなくなっております。しかし、ただ闇雲にソルバーを眺めていても本質的な勉強にはなっておりません。今回は、そのような事態を避けるためにも手始めとして「レンジ・モルフォロジー」という概念を紹介いたします。
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目次
1. レンジ・モルフォロジーとは
2. レンジ・モルフォロジーの種類
1. レンジ・モルフォロジーとは
レンジ・モルフォロジーとは、直訳すると「レンジの形態学」という表現になります。もっとわかりやすく言うと、「レンジの形」というとわかりやすくなるかと思います。このレンジ・モルフォロジーを知ると、レンジの構成方法やGTOソルバーが導き出すアクションがわかってくるという話です。
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2. レンジ・モルフォロジーの種類
レンジ・モルフォロジーには、大きく分けると6種類のレンジがあります。
- アンキャップト・レンジ (Uncapped Range)
- キャップト・レンジ (Capped Range)
- リニア・レンジ (Linear Range)
- ポラライズド・レンジ (Polarized Range)
- コンデンスト・レンジ (Condensed Range)
- マージド・レンジ (Merged Range)
モルフォロジーの理解を進めるうえで、最も簡単な、アンキャップト/キャップトレンジの説明からしていきましょう。
アンキャップト/キャップト・レンジ
レンジを最も簡単に捉える方法は、レンジが「キャップ」されているか、否かです。ここでキャップとは、「上位のレンジが塞がれてしまっている」という意味で使っており、誰がアドバンテージを持っているか(大抵はプリフロップアグレッサー)を仮定することができます。
キャップト・レンジを一言で表すと、「強いハンドを持っていないレンジ」です。例えば、BBのコールレンジはAA, KKのようなプレミアムハンドを持っていないと仮定できます。なぜなら、それらのハンドはプリフロップで3betしているからです。(下図参照)
一方、アンキャップト・レンジとは「強いハンドを持っているレンジ」です。標準的なオープンレンジは、強いハンドを含んでいるので、アンキャップト・レンジと呼ぶことができます。(下図参照)
以上のアンキャップト/キャップト・レンジをハンドの強さ順に、レンジの構成要素がどのように分布しているかのイメージすると、以下のようにまとめられます。
リニア・レンジ
リニア・レンジとは直訳すると「線形的なレンジ」という意味になります。レンジの構成要素は、強いハンドから中堅のハンドです。また、理論上のリニア・レンジの定義は、「コンティニューするアクションがひとつ」であることです。例えば、COのオープンレンジはレイズかフォールドしかありません。また、CO vs HJ RFI の3betレンジは大抵、レイズかフォールドしかありません。さらには、オールインされたときのアクションは、コールかフォールドしかありません。このような場合、レンジはリニア・レンジと呼びます。
リニアレンジはポストフロップでも見受けられます。そのような状況は、大きなベットに直面し、レイズレンジがほとんどないようなときです。例えば、BTN vs BB SRP(Single Raised Pot)のとき、ボードがAK6rだっとします。BTNがフロップでポット125%のオーバーベットをしてきた際に、BBのチェックレイズレンジはほとんどありません。よって、BBは強いハンドでコールするしかないのです。(下図参照)
ポラライズド・レンジ
こちらのレンジは結構、有名になってきたのでご存知の方も多いかと思います。直訳すると、「二極化されたレンジ」です。極端に強いハンドと極端に弱いハンドで構成して、相手にコールすることを無関心にさせることが目的です。以前の記事でもポラライズに関しては過去に記事にしておりますので、興味がある方はこちらもご覧になって下さい。
それでは、ポラライズド・レンジを理解するために、例えば、プリフロップにおけるCO 4bet vs BTN 3betの状況を考えてみたいと思います。ソルバーでこの状況をEV(期待値)表示してみると、以下のようになります。
EVが高いものは緑色、EVが低いものが赤色ですので、レンジの構成要素のほとんどが極端に強いハンドか極端に弱いハンド(EVがほぼ0)であることがわかります(※例えば、AJoはEVが0のブラフハンドとして起用されています)。
他にも、ポラライズド・レンジはポストフロップでも多く見受けられます。特にリバーはポラライズド・レンジの真骨頂です。例えば、BB vs SB SRPでボードがAAA23のとき、リバーでのBBのベットレンジはクワッズやフルハウスのバリューハンドと、弱いハンドのブラフで構成されており、ポラライズされていることがわかります。(下図参照)
実際、エクイティ分布をみると、ベットレンジは75%以上のエクイティがあるベストハンドとエクイティが33%以下のゴミハンドで構成されています。
コンデンスト・レンジ
コンデンスト・レンジ(別名デポラライズド・レンジ)とは、直訳すると「凝縮されたレンジ」です。こちらは、ナッツ級の強いハンドや極端に弱いハンドは含まれておらず、 主に中堅のハンドで構成されております。
代表的な例を挙げると、BTN コール vs HJ オープンです。BTNのコールレンジはポケットペアやAX、スーテッドコネクター、中堅のブロードウェイが含まれております。(下図参照)
このレンジの特徴としては、ポストフロップにおいてレンジ的に強いということです。実際に、 BTN コール vs HJ オープンのケースでフロップにおけるHJのアクションを集合分析※にかけてみますと、HJがアグレッサーにも関わらず、全フロップの75%でチェックが推奨されております。
(※集合分析とは、ボードの指定をせずに全ボードのアクションパターンを解析する分析方法です。GTO Wizardではプレミア会員のみのツールになります。)
その理由は、HJのオープンレンジには多くのハイカードのエアが含まれているのに対し、BTNのコールレンジには雑多なものが比較的少ないからと言えます。よって、たとえBTNのコールレンジがキャップされていたとしても、相対的に強いハンド(セットやツーペア等)の割合が多い、BTNのコールレンジを警戒する必要が出てくるのです。
マージド・レンジ
マージド・レンジは、少し複雑です。定義は、ポラライズド・レンジとリニア・レンジのちょうど間で、ブラフやナッツ級の強いハンドや中堅のハンドを含みます。例えば、BB 3bet vs BTN RFI の3betレンジはマージド・レンジになっております。(下図参照)
EVが高いものが緑色、EVが中くらいのものが黄色、EVが低いものが赤色となっております。ご覧の通り、BBの3betレンジはナッツ級のハンドから中堅、ブラフまで広く採用されていることがわかります。
また、マージド・レンジはポストフロップにおいても見受けられます。例えば、BBコール vs BTN RFIにおいて、フロップのカードが992rだったとき、BBがチェックして、BTNがポット33%のCbetをしたとします。このとき、BBのチェックレイズレンジがマージド・レンジになります。(下図参照)
エクイティ分布をみると、レイズレンジには多くの”Good”ハンドや”Weak”ハンド(両者のエクイティは33%-75%)が含まれております。ポラライズド・レンジと比べると違いがはっきりとわかります。
なぜマージさせるのか?
マージド・レンジはポーカーの複雑性が生んだレンジになります。実際の世界において、完璧なポラライズド・レンジはエクスプロイト的であって、効果的であったり、強靭であるわけではありません。特に、複数のストリートをプレイする必要がある場合、厄介になってきます。
具体的にみていきますと、BBがチェックレイズレンジをトリップスとゴミハンドで構成していたとします。すると、ここで生じる問題は、十分にインプルーブするハンドが少ないため、ターンやリバーでBBがあきらめてしまう機会が多く発生してしまう結果になるのです。また、ポラライズド・レンジは小さいプローブベットに弱いため、この種の攻撃を受けると、フォールドせざるを得ない場合が発生します。
一方、マージド・レンジはポラライズド・レンジに比べ相手のエクイティを悪化させる効果があります。つまり、あなたは遠慮なくバレルを撃つことができる上に、相手はそのバレルをコールするほど広いレンジを取れないということです。まさに、マージド・レンジはポラライズド・レンジとリニア・レンジのいいとこどりをしているという訳なのです。
以上のリニア・レンジ/ポラライズド・レンジ/コンデンスト・レンジ/マージド・レンジをハンドの強さ順に、レンジの構成要素がどのように分布しているかのイメージすると、以下のようにまとめられます。
いかがだったでしょうか?かなり、レンジについて理解が進んだのではないでしょうか?是非、GTO解析を実施する際は、レンジ・モルフォロジーも考慮してみてください。